ごく当たり前の日常から
珍しく、お洒落をしたので、洋服に似合う靴を下駄箱を覗いて探した。


……滅多に履かない、少しヒールのある黒いブーツが出て来た。


…懐かしい。

これは、修也さんが亡くなる前に、私の誕生日のプレゼントにと買ってくれたものだった…。


せっかく貰ったのに、履く機会が余りなかったのと、勿体無くて躊躇していたから、履いたのは1度だけ。


《由紀乃の為に、買ったのに…》


生前、修也さんが、よく愚痴をこぼしていたっけ。


私は昔を思い出して、クスッ…と静かに笑った。



このブーツを、こんな機会で履く日が訪れるなんてね…。


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