ごく当たり前の日常から
私は足早に喫茶店に向かって歩き進み出す。

《カララン…》


「いらっしゃい…」


ボソッ…と、マスターが一言呟き、私に視線を向けたので、「こんにちわ」と挨拶を交わして会釈をした後に、店内を見回す。


そんなに広くないから、すぐに相手を見つけられるだろうと思っていた時、突然にマスターが、おもむろに口を開く。


「お客さん…捜している相手なら、向こうの奥の席に座っているよ」


と、言ってくれたので、私は正直驚いた。まだ、此処の店に来たのは2度目なのに…。


そう思ってた私をチラリと見て、マスターは呟き出した。


「僕の喫茶店は、小さなお店だから滅多に新入りさん方は来ないんだ。だからすぐに覚えられるんだよ…。僕のお店に来てくれる人達は、皆、常連さんばかりだからね」

そう言って、マスターはニコリと微笑む。

「そうなんですか…。素敵なお店ですものね。私も、そのうち常連さんの1人になるかも知れませんね」


私もニッコリと微笑み返すと、「ありがとう…」と、照れ臭そうに俯いているマスターが、とても可愛く見えた。



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