偽装婚約~秘密の関係~
「晴弥、今日満月だよ。
キレイだねー!」
俺とあずさは中庭に移動していた。
あずさは夜空を見上げ、目をキラキラに輝かせている。
「噴水…うちの家にあったら良かったのに」
中庭には噴水があって。
そこに満月の光が反射してあずさの目と同じくらい輝いていた。
「ねえ…晴弥。
どうしてさっきから何も言ってくれないの?」
俺の袖を掴み、上目づかいをするあずさ。
まるで、男心を掴むために計算された行動だ、なんて考える。
でも俺はよくわかってる。
あずさはそういう計算ができるタイプではない。
今の行動はすべて、あずさが素でやっていることなのだ。
『なあ、あずさ。
なんで今ごろ、こんなことするんだ?』
俺たちは別れたじゃないか。
あのとき、ちゃんと終わりにしただろ。
それからお前は俺に寄りつかなくなった。
なのにどうして。
なんでまた、俺の傍にいようとするんだ?
「あのね…破談に、なったの」