偽装婚約~秘密の関係~
選択
それからパーティ会場であずさの姿を見かけることはなかった。
多分、帰ったんだろう。
そしてパーティが終わり部屋の隅にいた沙羅に声をかける。
『帰るぞ、沙羅』
「…………ん」
『元気ないな、沙羅。
初めてのパーティーで疲れたか?』
あずさとあんなことがあった手前、いつもは口から出ないような言葉が出てしまった。
「……まあ、そんなとこ」
てっきり沙羅に何か言われると思ったのにあっさり認められて。
拍子抜けした。
『帰ったらゆっくり休め。
そのうちこんなこと、慣れるから』
「…………うん」
沙羅があまりにも元気がなくて。
おかしい、そう思ったけど。
でも今の俺は沙羅よりもあずさのことが頭を占めていた。
『お帰りなさいませ』
『俺はもう休むから』
瑞季にジャケットを渡す
『お風呂のほうは?』
『朝入るから準備を頼む』
『かしこまりました』
『じゃ』
俺はネクタイを緩め、部屋へと戻る。
そしてベットに倒れこんだ。
瞼を閉じるとあずさの姿がちらついて。
今夜は寝られそうにない…
そんなことを考えてはあ、と溜め息をついた。