偽装婚約~秘密の関係~
沙羅が…泣いていた?
なぜだ?
思い当たる節が何もなくて。
頭の中が軽いパニック状態に陥る。
『沙羅が泣いた理由…お前、知ってるか?』
『存じ上げません。
沙羅様は何も言うことなくお部屋に戻られ、それから出てきていませんので』
『…そうか』
いったい、何があったというのだろうか。
あの、パーティで。
泣くほど辛いことが、あったのか?
なら、どうしてそれを俺に言わなかった?
いや…言えなかった、としたら?
もし、そうだった場合、沙羅が泣いた原因は俺。
…俺?
昨日、アイツに何かしたか?
そう考えてみるが何も出てこない。
『瑞季。風呂から出たらジュウゴのとこへ行く。
森本にそう伝えておけ』
『かしこまりました』
考えてもキリがないと思った俺は頭をスッキリさせるために風呂場へ向かった。