偽装婚約~秘密の関係~
『もちろん、断った』
『へえ。なんで?』
…なんで?
そんなことを聞かれるとは思ってなくて。
一瞬、言葉につまる。
『なんでも何も偽装とは言え、俺は今沙羅と婚約中だからな』
『…そっか』
なんだよ…ジュウゴ。
そんな目で見るな。
ジュウゴはすべてを見透かしたような目で俺を見ていて。
動揺を悟られないようにカップに手を伸ばした。
『で、どうするんだ?
お前らが付き合ってたことはもう沙羅にバレた。
本当のこと、言うのか?』
『…そうするしかないだろ』
これ以上沙羅を傷つけたくない、という言葉は呑み込んだ。
どうせ、ジュウゴに笑われるんだろうから。
『そうか。
お前がそうする、って決めたならそれでいいと思うぞ。
…っていうかなんで暴露する場所がわざわざうちなんだよ?』
『うるせー
気分転換だ』
俺の答えにジュウゴが呆れて溜め息をついたことは、もはや言うまでもないだろう。