偽装婚約~秘密の関係~
「遊馬くん、今日も授業出ないの?」
『すみません。
今、僕が教室にいるとみんなに迷惑かけちゃうので。』
「確かに…そうね。
ウワサが落ち着くまでここにいればいいわ」
『すみません。ありがとうございます』
場所は保健室。
一応、学校には来ているが俺は最近、授業を受けていない。
と、いうか教室にも行っていない。
理由は簡単だ。
俺が教室にいると人が押し寄せるから。
ウワサの真相を聞きに、野次馬精神旺盛なヤツらがきて周りに迷惑をかける。
だから教室には行けないのだ。
保健室のベットに横になって溜め息をつく。
まさか俺たちが付き合ってることがバレてこんな大騒ぎになるとは…
俺とあずさが付き合い始めたのは今から約半年前。
芽依の紹介であずさと会って、自然に惹かれていた。
あずさはいつだって笑顔で。
ただ横にいて笑ってくれるだけで、俺は幸せだった。
付き合い始めてすぐにあずさから許婚がいることを聞かされた。
その相手がうちのライバル会社の息子だ、ってことがそもそも不運だった。
そして俺たちが付き合ってることがどこからか漏れたのが3日前。
その次の日にはもう、あずさは学校に来れなくなっていた。
親が、学校には行かせないと言ったのだ。
俺と別れない限り、学校には行くな。
あずさの親はそう言ってあずさを家に閉じ込めている。