偽装婚約~秘密の関係~
『先生』
「ん?どうしたの?」
『先生は僕とあずさが付き合ってること…知ってました?』
保健室の先生は情報通で有名だ。
学校のゴシップネタで先生が知らないことはない、とまで言われている。
「知ってたわよ。
ウワサが広まるずっと前からね」
『そう…ですか』
あれだけひっそりとあずさと交際していたのに先生には筒抜けだったワケだ。
『なんで知ってたんですか?』
「そうね。しいて言うならカン、ね」
『カン…?』
「そう。あなたたちが仲がいいことは知ってた。
で、半年くらい前からなんか2人の雰囲気がおかしいなあ、って漠然と思ってて。
そしたらある日、長門さんが携帯で話してる声聞いたの。
あなたの名前、言ってたわ。
そのとき、気づいた。
この子…恋してる、って。
そのときカンが確信に変わったわ」
先生の言葉を聞いて思わずふっと笑ってしまう。
『先生、エスパーですか?』
「…かもしれないわね」
ふふふ、と笑いながら言う先生。
そうか。
先生のようにカンの鋭い人間がいたっておかしくない。
そいつが仲間内での会話で付き合ってるんじゃないか、そう言ったとしたら。
その言葉が独り歩きして
『2人は付き合ってる』
そう、なったっておかしくない。