偽装婚約~秘密の関係~
『あの…でしゃばったことを1つ、申し上げます』
『なんだよ?』
瑞季は俺に背中を向けている。
ったく、なんてご主人様に無礼な執事なんだ。
『晴弥様が悩む気持ちはわかります。
ですが、あまり1人で頑張らないでください。
晴弥様が苦しいとき、あなたに手を差し伸べるのも執事の役目です。
だから、お願いです。
熱が出るほど悩むならどうかこの瑞季に話してください。
あなたのそんな姿…わたくし、見たくありません』
そう言った瑞季は部屋を出て行く。
ホント、困った執事だ、アイツは。
そんでもって、ホント、困ったヤツだ、俺は。
瑞季にそんな姿、なんて言われてる時点で論外。
世界の遊馬を継ごう、ってオトコが恋に振り回されて熱、出して。
弱々しい姿さらけだして。
アイツのおかげでようやく、もとの自分を取り戻せそうだ。
何が大事で。
俺自身が何を守りたいのか。
それだけを考えた時。
答えは1つだけじゃないか。
何をいったい、俺は悩んでるんだ。
本当は、最初から分かってた。
ただ、怖くて逃げてただけ。
今、俺が1番大切に守りたいのは
俺自身ではなく、
『あずさ』
なんだから、答えは1つ。
アイツとは…
…別れよう。