偽装婚約~秘密の関係~
『…失礼いたします』
ノックに続いて瑞季の声。
鈍い動きを続ける頭。
ああ…ホント、辛い。
『奥様からお電話です』
『え?母さんから』
『はい。なんでも急用だそうで』
はあ、と1つ溜め息をつき、子機を受け取る。
『…もしもし』
「あ!晴弥?!
あなた、いったいどういうこと?!」
頼むよ、母さん。
頭に響くからあんまりデカイ声を出さないでくれ。
『何がでしょうか?』
「聞いたわよ、ウワサで!
あなた、紫水のご令嬢とお付き合いしてるらしいわね?」
『…なんでそのことを…』
「私の耳にはなんでも入ってくるわ」
誇らしげな母さんの声。
ったく、この人の情報網はいったいどうなってんだ?
なんで海外にいる母さんにそんなホットな情報が届くんだよ。
「晴弥?いい?
あなたがそのまま今の学校に通いたいなら紫水のお嬢さんとは別れなさい。
もし、別れないというならすぐに留学させるわ。
分かった?」