偽装婚約~秘密の関係~
『いいかい?
契約規約は2つだけだ。
まず1つ。
この関係は決して他の人に口外してはならない』
鬼灯沙羅は頷く。
あ、ちなみに契約規約、実は2つじゃないんだよね。
ま、その内容は後々分かることだから言わないけど。
『あ、とりあえずサインしてくれる?
そのサインは契約成立の証拠だから』
俺は鬼灯沙羅にペンを渡す。
もちろん、こんな早い段階でサインをさせるのにはちゃんとしたワケがある。
この契約規約の2つめ。
これを読む前にサインをさせなければ、
きっと、沙羅はサインすることを拒むはず。
それを防ぐために
この段階でペンを渡したのだ。
沙羅は俺から受け取ったペンで素直に名前を書いて私印を押す。
よし、完璧。
『はい、契約成立。
沙羅、お前はもう俺の言う通りにするしかない』
俺はスイッチを『OFF』に切り替え、
いつもの調子でニヤッと笑った。
その途端、沙羅の目が点になった。
呆気にとられてやんの。
『そうそう。
契約規約の2つ目。
相手に惚れてはいけない。
ま、でももう沙羅は俺に惚れてるみたいだけど』
なあ、沙羅。
顔に「さっきとキャラが違うじゃん!」って書いてあんぞ?
俺はクスクス笑いながら沙羅に顔を寄せる。
そして
『じゃ、これからよろしくね?さーら』
俺はあいさつ代わりに頬にキスをした。