偽装婚約~秘密の関係~
想定内過ぎる母さんの言葉に思わず、苦笑した。
どうせ、母さんのことだ。
うちのライバル会社の息子とあずさの縁談の話を知っていたんだろう。
そうなれば、別れろ、というのは必然だった。
『母さん』
「何?」
『安心してください。
あずさとは近いうち…ちゃんと別れます』
「本当?」
『はい。
大丈夫ですよ、母さん。
自分が犯した過ちは、自分で処理しますので。』
「分かったわ。
晴弥の言葉、信じる。
それじゃあ、今から出かけるから切るわ」
母さんは俺の返事を聞くことなくプツッと電話を切った。
なんて身勝手な人なんだ…あの人は。
言いたいこと言って、
別れる、って知ったらすぐに電話切るんだもんな。
まあ、別に話したいことがあったワケじゃないから良いんだけど。
それにしても、疲れた。
母さんとの電話はホントに疲れる。
子機をベットサイドに置くと
俺は静かに瞼を閉じた…