偽装婚約~秘密の関係~
『晴弥様?大丈夫ですか?』
『瑞季。
俺…ダメな人間なんだ。』
親の名前がなかったら、恐らく、生きていけない。
ホント…ダメなヤツ。
だから
『アイツの未来のすべての責任を負えない…』
もっと俺が自立した人間だったら。
そしたらあずさを紫水のブランドから切り離せたのに。
自分の不甲斐なさに喉の奥のほうが熱くなって。
ジワジワと涙が込み上げてきた。
『別れたく…ないんだ』
あずさがスキで。
でも、俺たちは『スキ』って思いだけじゃダメで。
あずさが誰よりも何よりも大切だから。
だからアイツを苦しませたくない。
そのために残された選択肢は…たった1つ。
ごめんな、あずさ。
お前の泣き顔は見たくないけど。
それよりも見たくないのは、
何年後かに苦労して辛い思いをしてるあずさだから。
だから今、俺はあえて厳しい選択をする。
『晴弥様…私はあなたが出した答えはどんな答えだろうと。
それが正解だと思いますよ』
瑞季の言葉に堪えていた涙がいっきに溢れだした。