偽装婚約~秘密の関係~
『元気にしてたか?…って元気なワケないか』
あずさは俺から離れようとはせず、まだ抱きつかれたまま。
でも俺はそれを拒まなかった。
会えなかった時間を埋めるように。
俺たちの間に誰も入ってこれないように。
俺は、あずさを抱きしめる。
「元気じゃなかったけど…晴弥の顔見たら元気出た」
ニコッと笑うあずさ。
目の下には珍しくクマができていて。
俺が寝不足だったように、あずさも寝られなかったのか。
「学校、どんな様子?
芽依がすごい騒ぎになってる、って言ってたけど」
『廊下歩くたびにウワサされてる気分になる。
だから今は保健室登校』
「そっかあ。
ごめんね、晴弥だけに辛い思いさせて」
『俺だけじゃないだろ。
あずさだって辛い思いしてんじゃねーか』
時間よ…止まれ。
本気でそう願った。
離れたくない。
別れたくない。
一緒にいたい。
そんな気持ちが溢れ出そうで。
せっかく決めた意志が今にもボロボロと崩れて行きそうだ。