偽装婚約～秘密の関係～

意志を言葉にした途端、目頭がジワッと熱くなった。

でも今、俺が泣くワケにはいかない。


「そんなこと…言わないでっ!


私は…晴弥さえいればいいの。

地位なんていらない。


そんなもの、捨てればいい。

晴弥が一緒ならゼロからでもやっていけると思うの。


だから…私と一緒に逃げよ?」


あずさ。

俺たち…似た者同士なのかな。

俺もまったく同じことを思ったよ。



『無理だ。

俺たちは別れる以外、方法はないんだよ』


「イヤっ!!

私…っ…晴弥が大好きなのっ!!

別れたくない!


あるよ…絶対に。

別れる以外の選択肢。

だからそれを今から２人で探そうよ…!


お願い…別れるだなんて言わないで…っ!」


涙をボロボロと流し、

俺にすがるあずさを見て。


やっぱり


『愛おしい』


そう思った。


だから、守ってやりたい。

…誰よりも大切だから。