偽装婚約~秘密の関係~
『…父さん』
『おお、晴弥か。
久しぶりだな』
場所は父さんのお気に入りの…テラス。
書斎にいなかったらだいたい、ここにいる。
『あまりに突然すぎませんか?
連絡くらいしてくれてもいいと思うのですが』
『すまない。
母さんがたまにはサプライズで、って言うもんだから』
そんな答えに溜め息をつきそうになって慌てて、飲み込む。
『でも、瑞季が焦ってますよ?
なんの準備もしてないのに、って。』
『焦ってるのは瑞季だけじゃないだろ?
だからこうして、俺のところに相談にきた。
どうだ?違うか、晴弥?』
ったく何もかも、父さんにはお見通しで。
この人、読心術でも持ってんのか?
『その通りです。
でも、仕方ないじゃないですか。
誰だって焦りますよ、突然帰ってこられたら。
それに沙羅はまだ…事情をよく呑み込めてないですし』
『ああ、それはあの子に悪いことをした。
ただでさえ、とんでもないことに巻き込んでいるのに』
父さんの口ぶりから
どうやら、沙羅との関係が本物でないことはバレているらしい。
まあ別になんの問題もないからいいんだけど。