偽装婚約~秘密の関係~
『笑え、沙羅。
んで堂々と歩け』
会場に入るとあまりの人の多さに沙羅は戸惑っていて。
挙動不審になっていた。
だから思わず、小声で囁いた。
そうすると沙羅の顔が引き締まって。
スイッチが入ったのだと俺でも分かった。
そして前に設置された壇の上にのぼる。
そこから見えたジュウゴと芽依の姿。
2人は満面の笑みで手を振っている。
相変わらずお気楽な2人だ。
チラッと沙羅を見るとバッチリ目が合って。
俺は頷いて見せる。
『えー…皆様。
本日はお忙しい中、足を運んでいただき、ありがとうございます。』
マイクを手に取り、
俺は作り笑顔を浮かべ喋り始める。
『私は今日で18になりました。
それもこれも皆様の支えがあったからこそだと思っております。
そして、私の隣にいるのは私を生涯支えてくれる大切なパートナーになる人です』
俺は沙羅にマイクを向ける。
そうすると沙羅は一瞬俺を思い切り睨んだ。
バカめ。
主役の1人であるお前がずっと黙っていられるワケないだろーが。
「鬼灯沙羅と申します。
今後とも、晴弥共々よろしくお願いします」
そう言ってニッコリ笑った沙羅は、完全に作り笑顔をマスターしていた。
やればできるんじゃないか、沙羅。
少し見なおしたぞ。