偽装婚約~秘密の関係~
『…え?!本当ですか?
いやあ、うらやましい限りですよ。』
「何言ってるのよ、晴弥くん。
しょせん、遊馬電器には勝てないんだから~」
あはは~と笑うおばさん。
とある食品会社の社長夫人だ。
そしてこのおばさんの向こうにあの姿を見つけた。
『では今後ともよろしくお願いします』
「こちらこそ~」
頭を下げ、目的の人物に向かって歩き出す。
そして腕をとると部屋の隅に連れて行った。
「……何よ」
目的の人物…沙羅は俺を睨む。
『俺に黙ってどこへ行ってたんだ?』
「トイレよ、トイレ」
ウソだというのは表情から分かっていた。
でも、追求するヒマなんてなく、
『へぇ~
ずいぶんと長いトイレだったんだな。
お前が出て行ってから30分も経ってるぞ?』
と、言った。
何か言いたげな顔をしていた沙羅だがそのまま黙り込んだ。