偽装婚約~秘密の関係~
『父さん。それは違いますよ』
『…?』
『沙羅はそんなこと、気にするようなヤツじゃありません。
アイツは…強いヤツですから』
短い付き合いだが、分かる。
沙羅はそんなのまったく気にしてない。
『じゃあなんで沙羅さんは逃げ出したんだ?』
『僕が…中途半端だったせいです』
沙羅が逃げた理由は分かってる。
全ては俺が悪い。
『…晴弥』
『はい』
『お前がやることは分かってるか?』
『もちろんです。
ご心配には及びません』
『ん。ならいい』
『では失礼します』
頭を下げ、部屋を出た。
『…はあ』
ヤバイ。
久々に緊張した。
『晴弥様』
『なんだ?』
『ご命令を』
ああ、と呟き瑞季に命じる。
『今すぐ沙羅の様子を見て来い』