偽装婚約~秘密の関係~
ただ純粋に
『来たのか、遊馬』
『来て悪かったな』
玄関のドアが開いたかと思うとさっそくこの憎まれ口。
相当月島に嫌われてるらしい。
『まあ、立ち話もなんだし、あがれよ』
『いらっしゃいませ、遊馬様。
お久しぶりです、瑞季様』
玄関先に瑞季より体格のいい男が1人。
この月島家に仕える葉山だ。
『さあ、遊馬。
俺はお前と無駄な話をするつもりはないんだが』
『分かってる。
こっちだってお前と世間話なんてしたくない』
俺はいつもの優等生の自分を出さなかった。
理由はいたって単純。
めんどくさかったからだ。
それに、今さら隠す必要もあるまい。
『先に言っておくが、沙羅は渡さない』
月島はそう言い切った。
だがな、月島。
それは俺も同じなんだよ。
『俺も沙羅を渡すつもりはない』