偽装婚約~秘密の関係~
『はあ?何を言ってるんだ、お前は。
沙羅を渡すつもりはない、って今沙羅はこっちにいるんだぞ?
渡すも渡さないもないだろう。』
月島の言うことは一理ある。
だが、俺と沙羅は契約で結ばれているのだ。
これを知らない月島に言葉の意味を理解しろ、というのも無理な話だ。
『なあ、月島。
俺らもバカじゃないだろ?
渡せ、渡せないじゃずっと平行線なままだ。
もっと効率のいい話し合いをしないか』
あえて、月島の言葉には何も返さなかった。
言うことなど何もない、そう判断したからだ。
『効率のいい話し合い?
何言ってんだよ、遊馬。
お前が沙羅を諦めればいいだけの話だろ』
チッと思わず舌打ちが出た。
そういうことを聞きたかったワケじゃないんだ、俺は。
『おい、遊馬』
さっきまで穏やかだった月島の顔が歪んだ。
舌打ちされれば仕方ないだろう。
『あのさ、月島。
それじゃあ今までと何も変わらないだろう。
俺が言ったのは効率のいい、話し合いだ。』