偽装婚約~秘密の関係~
『月島様。
主人が手を出したことは謝ります。
ですが、手荒な事をされるのは…』
『まあ、これでおあいこ、ってことで。』
…ああ、思いだした。
月島、合気道やってたんだっけ。
何も武術を身につけていない俺が勝てるはずがないな。
『……いい加減帰れよ』
だいぶ月島もイラついているらしく、声色が先ほどとは違っていた。
『イヤだ』
沙羅なしで帰れるワケねーだろーが。
『なんだか今の遊馬は学校のときとは別人だな。
学校にいるときは漫画にでも出て来そうな優等生。
なのに今は優等生とはかけ離れた我が儘野郎だ。
ま、でも今の方が人間らしいけどな。
学校でのお前はまるで…ロボットだ』
月島は、ははっと乾いた笑い声で笑う。
『月島は学校でも家でも変わらずお喋りなんだな。
で、沙羅は?
いつになったら出してくれる?』
話を逸らそうって魂胆か?
だとしたら、残念だったな、月島。
俺はそんな手に乗るほど単純じゃない。