偽装婚約~秘密の関係~






『………お帰り、沙羅』


どうしたんだろう。

自分でもよく分からない。


でも、沙羅が家にいるという事実に

自分でも驚くほど安心して。


ガラにもないことをしてしまった。



「………はる…や…?」


沙羅が驚いているのが分かる。

でも、止められなかった。


『勝手に…いなくなるなよ』


バカヤロウ。

この俺の手を煩わせやがって。



『どんだけ…俺が心配したと思ってんだよ…』


お前が俺に心配してもらうなんて100年早いっつーんだよ。



『あんな置き手紙1枚残して

無一文のくせに家飛び出したりすんなよ…


もう2度とあんなこと、しないでくれ。

じゃないと俺…』



「分かった。

もう2度あんなことしない」


その言葉を聞いて、俺は沙羅から離れた。


『よし。

言ったな?沙羅。


じゃあそれ、ちゃんと守れよ?

今のしっかり録音させてもらった。

だからこれ、契約の1つとしていれとくから』


ホントは、こんなことしたくなかった。

でもな、沙羅。

お前が勝手にいなくなったりするから。

だから、こんなことをするハメになったんだ。


手探りで再生ボタンを押す。

そうすると沙羅の声で


「分かった。

もう2度とあんなことしない」


と、さっきのセリフが繰り返された。








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