偽装婚約~秘密の関係~
『お前さ、自分の立場…ちゃんと分かってる?
俺、言ったよな?前に。
沙羅は俺のペットなんだから、って。
ペットが勝手にご主人様から離れていいと思ってんの?
俺、ダメだと思うんだよね。
ペットが主人の命令ナシに動くのって。
だからさ、沙羅。
もう2度と勝手に出て行くな。
せめて俺に一言声かけろよ。
ま、声かけたところで出て行くことにOKなんてしないけどな』
どうしても、我慢できなかった。
女みたいにグチグチ言うのは好きじゃないが、
でも、止められなかった。
それくらい、沙羅に逃げられたことは俺の中でショックが大きかった、ということだろうか。
「ちょっと待ちなさいよ!」
部屋を出て行こうとした俺を沙羅が大声で止める。
「あんたね、人のことペット、ペット言ってふざけてんの?!
あたし、晴弥のペットじゃないから!
あたしはあんたの偽装婚約者!
分かった?」
沙羅の迫力はハンパではなく。
でもそれが、俺にしてみたら嬉しかった。
だから
『残念だ、沙羅。
俺にはお前が何言ってるか分からない』
なんて意地悪なことを言ってみる。
そうすると
「はあぁぁぁあ?!
ふざけないでよ!」
余計、迫力が増した。
ったく、困ったお姫様だ。
「分かるまで何度でも言ってあげる。
あたしはあんたのペ―――…………
そこまで言って沙羅の言葉は途切れた。
理由は簡単だ。
沙羅の口を塞いだからだ。
この俺のキスで。