偽装婚約~秘密の関係~
研修
それから、
キスに酔いしれている沙羅を残して部屋へ戻る。
『失礼します、晴弥様』
『どうした』
『旦那様からお電話です』
瑞季から子機を受け取る。
『もしもし』
『沙羅さんは戻って来たか?』
『はい、無事に』
『そうか、それは良かった』
まさか、そんなことを確認するためにわざわざ電話してきたのか?
『晴弥、そろそろ進路を決めなきゃいけない時期だろう?』
『はい、そうですね』
『もちろん、こっちの大学に来るんだよな?』
こっち、というのは遊馬電器の支社があるアメリカのことだ。
『そのつもりです』
と、いうか父さんがそうしろ、と言ったんじゃないか。
『じゃあ大学の見学も兼ねて、
1週間ほどこっちに来い。
それとお前に手伝ってほしい仕事もあるんだ』
『分かりました。』
『じゃあ木曜日の飛行機を手配しておく』
『ありがとうございます』
『沙羅さんによろしく言っといてな。』
『失礼します』
電話を切って寝ころんだ。
研修…か。
正直、あまり気乗りがしない。
理由は明白だった。
アイツがいるから。
ただ、それだけ。
それだけのことなのに。
…俺、アイツに振り回されっぱなしだな、ホント。