偽装婚約~秘密の関係~
『じゃあ、行ってくる。
沙羅のこと頼んだぞ』
『本当によろしいのですか』
出発の日の朝。
玄関先で瑞季のこの言葉。
『何がだ?』
『沙羅様をおいて行かれてよろしいんですか?』
何言ってんだ、コイツは。
『いいに決まってんだろ。』
『ですが、まだ不機嫌でいらっしゃいます』
『ほっとけ。
…行ってくる』
『お気をつけていってらっしゃいませ』
瑞季のヤツめ。
俺が悩んでたこと知ってるくせに、
最後の最後にあんな揺さぶりかけやがって。
それに沙羅だって全然分かってない。
場所が場所なだけに
沙羅を危険にさらすわけにはいかない。
そう思って連れて行かないことにしたのに
沙羅ときたら
「この冷血晴弥っ!!」
なーんて勝手なこと抜かしやがって。
俺の配慮、少しはくみ取ってほしいもんだ。