偽装婚約~秘密の関係~
『来たか、晴弥。
早速だがこれから会議なんだ。
一緒に行くぞ』
え?はい?
何言ってんだ、この人は。
『おい、何ぼーっとしてるんだ。
森本に渡しておいた資料、持ってこいよ』
異国の地についてまだ2時間も経っていない。
それなのに父さんときたらもう働かせよう、ってか。
息子に対する思いやりがなさすぎるだろ、いくらなんでも。
『なあ、晴弥』
『はい』
歩きながらの会話。
父さんの様子から1秒たりとも時間をムダにしたくない、という思いがヒシヒシと伝わってくる。
『お前は、この会社を継ぎたいか?』
『もちろんです』
『そうか。
ならここにいる間、私の傍を片時も離れるな。
吸収できるものはすべて吸収しろ。』
『…はい』
どうして父さんがこんなことをいきなり言い出したのかは分からない。
でも、決めた。
休みたい、なんて軽い考えはもう持たない。
父さんから会社経営のいろは、全て盗むつもりでやってやる。