偽装婚約~秘密の関係~
『…森本、水』
『どうぞ』
500ミリのペットボトルの水を一気に半分ほど飲み干す。
なんだ…この疲労感。
父さんについて
会議に参加し、
社内を歩き回り、
いろんな会社に出向き、名刺を交換する。
っつってもまだ俺に名刺なんてないんだが。
『晴弥。今日はもうホテルで休んでいいぞ』
『いえ、最後まで付き合います』
『…そうか。』
父さんはそう言って車に乗り込む。
それに続いて俺も乗り込んだ。
ったく、我が父親ながら
本当にこの人はすごいと思う。
もういいトシなのに
1日中動き回って喋りまくって、
時に怒鳴って時に笑って。
そんなふうに仕事をこなして、
もう結構いい時間なのに
微塵も疲れを感じさせない。
どうしたらこんなふうに年を重ねられるんだろう。
どうしたらこんなにタフになれるんだろう。
『なんだ?晴弥。
顔になんかついてるか?』
『いえ、なんでもありません』
俺もいつか、
必ずこんなふうになってやる。