偽装婚約~秘密の関係~
お前の望むもの
『晴弥、今日も忙しくなるぞ』
『はい』
そうして始まった2日目。
スケジュールを聞くと本当にビッチリと詰まっていて。
目の前にある自分の父親の背中を見つめながら
この人の体力は底なしなんじゃないか、そんなことを思った。
父さんの隣に座って、
会議に参加し、いろんな人たちの話を聞いた。
なぜか俺の意見を求められ、
しどろもどろになりながらも
タドタドしい英語で答えたりもした。
少しの休憩時間には
沙羅のことで頭がいっぱいになって。
自分自身のことなのに
なんで今、俺はこんな状況に陥っているのか。
そればかりが頭を占めていて。
だけど
『行くぞ、晴弥』
そう父さんに声をかけられたら頭をオンに切り替えて、沙羅のことを隅に追いやった。
それでも少し気を抜いただけで、
すぐに沙羅が現れて。
頭がおかしくなりそうだった。
『おい、晴弥。
すまないがA社に行って資料を受け取ってきてくれ』
『はい、分かりました』
森本と父さんの秘書と車に乗り込み、遊馬電器を出た。