偽装婚約~秘密の関係~
「なんで…なんであんたが…」
よっぽど、こっちのセリフだと言ってやりたかった。
『父さんにお前に客人だ、って言われて。
今すぐ会いに行け、って言われたから…来たんだ…
なんでだよ、沙羅。
昨日、電話したときは日本だったろ?』
「……あんたが淋しそうだったから来てあげたの」
沙羅はそう言いながら溢れた涙を拭う。
何泣いてんだよ…
『沙羅が淋しかっただけだろ?』
冗談を言ったつもりなのに。
うまく表情が作れない。
「さっきの…聞いてた?」
『……少し』
意味が全然分からなかったけどな。
「なら話は早いね」
沙羅は何やら鞄の中から紙を取り出し俺の前に突き出した。
「お願い、晴弥。
契約…今日で終わりにしよう」
…やっぱり、俺には理解できなかった。
沙羅が何を言っているのか。