偽装婚約~秘密の関係~
『瑞季…今すぐ出て行け』
俺は沙羅から目を離すことなく言った。
『…………かしこまりました』
瑞季の視線に、耐える自信がなかった。
ほら、今だって。
瑞季の顔は見えないけど、アイツの視線を痛いくらいに感じる。
沙羅に手出すなよ…って視線。
瑞季が出て行ったのを確認して言う。
『沙羅…どうして突然、そんなことを言うんだ?
契約を終わらせよう、なんて』
ちゃんと、確認しておきたかった。
さっきの沙羅の言葉が本心なのかどうか。
「晴弥と…晴弥と一緒にいるのが辛いからよ。
あんたと一緒にいるとあたし、おかしくなっちゃうから。
まだ、正常でいられるうちに
元の生活に戻りたいの。
それを望むのは…いけないこと?」
いけないこと?
そう聞かれればいけないことなんかじゃない。
でも…
『……俺は、許さない』