偽装婚約~秘密の関係~
扉の向こうには俺と沙羅のための部屋がある。
多分、普通に4人家族くらいが過ごせるくらいの広さがある部屋だ。
沙羅は驚いているのか口をあんぐり開けている。
相変わらず、間抜けな面だ。
『こっちが俺の部屋。
でその隣が沙羅の部屋だ。
一緒に住むっつっても寝室は別だから。
荷物はもう部屋に運んである。
多分、明日か明後日には全部、荷物は揃うと思うから』
言うことだけちゃんと伝えて俺は自分の部屋へ戻った。
ベットに寝転がって、ケータイを開く。
何をするでもなく、ただケータイを開いた。
すると突然、勢いよくドアが開いた。
ったくコイツは。
非常識なのか、おい。
『勝手に部屋入んじゃねぇ』
そう言って沙羅を睨む俺。
仕方なく、部屋を出てリビングの黒いソファに座る。
『で、なんだよ?』
つーか沙羅。
なんで睨んでんだよ。
「携帯、圏外なんだけど!」
『あ、忘れてた』
俺はポケットを探り白い携帯を取り出した。
『これ、新しい携帯。
その携帯、解約したからこっち使え』
そう言うと沙羅の眉間に皺が寄って。
その顔は、
なんで契約なんてしたの!?
って言いたそうだな。
ったく。
少しくらい自分の置かれた状況考えたら分かるだろーが。
俺は仕方なく説明をする。
『お前の親が携帯代払える状況じゃないから解約して俺の家の名義で買ったんだ。』
ああ、なるほど、みたいな顔をする沙羅。
そして最後にこう付け足した。
『要らないならいいけど、お前…連絡したい奴、いんだろ?』