偽装婚約~秘密の関係~
『……待てよ』
部屋を出て行こうとした沙羅に思わず、声をかける。
『最後に1つ、聞かせろ』
聞いておかないと、この胸のモヤモヤを取り除くことは不可能だと思った。
だから、ちゃんと、答えてくれ。
お前の言葉で、明確に、俺に伝わるように。
「…………何よ?」
『沙羅は…俺に、何を望んでた?』
少しの沈黙。
胸が張り裂けそうになっていた。
「何も望んでなんていなかった。
けど…しいて言うなら」
そこで1度、沙羅の言葉が止まる。
「好きだ、って言って欲しかった。
あたしは、ただ、一言。
晴弥に、好きだ、って…言って欲しかった…」