偽装婚約~秘密の関係~
次の日の朝。
『おはようございます、晴弥様』
『ああ』
制服に着替え、部屋を出るといつものようにコーヒーのいい香りが漂っていた。
『沙羅は?』
『まだ寝ておられます』
『今すぐ起こせ』
『かしこまりました』
瑞季は俺の前にコーヒーと朝刊と英字新聞を置いて沙羅の部屋へ向かう。
『沙羅様…沙羅様。
起床のお時間です』
瑞季が沙羅の部屋のドアを開けっ放しにしたせいで声が丸聞こえだ。
何度も呼びかけているが沙羅の声は聞こえない。
俺は新聞をテーブルに置き、立ちあがった。
そして瑞季を後ろに下げて
『沙羅、早く起きないとキスすんぞ』
と、耳元で囁く。
すると
「……や、ヤダ!」
なんと驚いたことにバッチと目が開いた。
『そんな俺とキスしたくないのかよ…』
俺とキスできるなんてこんな幸運なことはねーのに。
もったいないことしてやんの、コイツ。
そう思いながら俺は元の場所に戻りまた新聞に目を落とした。