偽装婚約~秘密の関係~
「瑞季さーん」
しばらくするとネクタイを持った沙羅がドアの向こうから現れた。
…ちぇっ!
思わず小さく舌打ち。
だってうちの学校の制服、沙羅にやけに似合ってんだから。
こんなんじゃヘンな虫がコイツに寄りついてくんだろ。
『どうかなさいましたか』
「ネクタイ…結べないんですけど」
なんつーアホな発言。
『ネクタイも結べねぇーのかよ』
小声で呟く。
すると一瞬だけ沙羅に睨まれた。
あれ?今の、聞こえたか。
ま、別に聞こえたって構わないが。
沙羅からネクタイを受け取った瑞季が手際よく結んでいく。
あーあ。
なんか、おもしろくねえ。
なんで瑞季の顔、そんなに凝視してんだよ、沙羅。
そんなに瑞季がカッコイイか?
…なんて自分でもよく分からない感情を抱きつつ、パンをほおばった。