偽装婚約~秘密の関係~





『それではいってらっしゃいませ』


瑞季の見送りを受けて森本の車に乗り込む。


車に着くまでの間に瑞季と森本の役割の話をすると、

沙羅は信じられないっ!と言いたげな顔で俺を睨んでいた。


つーかさ、沙羅。

お前、俺を睨む頻度、高くないか?


そんなに俺が気に食わないか?

お前のピンチを救ってやった、っていうのに。



『おはようございます、晴弥様、沙羅様』


車の横で森本が頭を下げる。

いつ見ても胡散臭い笑顔だ。



「おっはよー!森本!」

なぜか沙羅はハイテンションで。

ヘンなヤツだな、ホントに。


『お元気そうで何よりです。

いろいろ大変だと思いますが頑張って下さい』


「ありがと!」


沙羅が車に乗り込むとゆっくりと動き出した。

学校に着くまでの間、沙羅は一言も言葉を発しなかった。

いつでもうるさい沙羅が黙っていたのだ。


さすがに新しい学校に行くってことで緊張してんのか?


沙羅の横顔をチラッと見て考える。

…あ、いや、沙羅に限ってそれはないか。


コイツ、緊張とかまったくしなさそうだし。



「…なんか顔についてる?」


『え?』


今まで黙っていた沙羅が突然言葉を発したもんだから驚いてまともな返しができない俺。


「あ、分かった。

あたしに見とれてたんでしょ?」


『…アホか』


沙羅は何か言いたげに俺を見ていたが結局、何も言わなかった。

いつもそんなふうに静かでいてくれたら助かるんだけどな。







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