偽装婚約~秘密の関係~





『おかえりなさいませ』


玄関でいつものように瑞季が待っていた。


沙羅は瑞季に


「ただいまです」

なんて丁寧に言っている。


ただいま、って言ってるってことはもううちを自分の家だ、って思ってるってことか?

だとしたらコイツの順応能力すごいな、おい。


そして部屋に入ろうとしたところで大事なことを思い出す。


『ジュウゴ、学校ですげぇー人気だから気をつけろよ』


それだけ言って部屋に入る俺。


沙羅は何も知らないからジュウゴに言いたい放題言うだろう。

だけど、それは絶対にやめたほうがいい。


いくらセレブが通う学校も所詮、学校だ。

当然、イジメだって存在する。


学校じゃかなりの人気をほこっているジュウゴにあんな慣れ慣れしく接するとジュウゴのファンに痛い目に合わせれる可能性もゼロじゃない。


俺はその可能性を心配しているのだ。

現にジュウゴの婚約者の芽依(メイ)は今じゃもう落ち着いているが散々苦労した。


それに俺の元カノのあずさだって…


そこまで考えて首を振った。

何を考えてんだ、俺。


今ごろあずさのことなんて考えて。

俺、もしかしてまだ引きずってんのか?











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