偽装婚約~秘密の関係~
『洋介ってもしかして…沙羅の彼氏か?!』
ジュウゴが隣で騒ぐ。
殴りたい衝動をどうにか抑える。
『答えろよ、沙羅。
別れたのか?』
「…別れてない」
予想通り…ってところか。
『俺、言ったよな?
洋介とは別れろよ、って』
「あんたが気安く洋介とか呼び捨てにしないで!」
沙羅が声を荒げて怒鳴る。
そんなに洋介が好きなのか。
あんな二股男のどこがいいんだよ?
『沙羅。
いつ別れるつもりだ?』
「あたしは…あたしは洋介と別れるつもりはこれっぽっちもないから」
沙羅はまた怒鳴ると部屋へ逃げ込んだ。
『どういうことだ?晴弥』
『何が』
『だから、なんで沙羅にそこまでして無理矢理その洋介、ってヤツと別れさせようとすんの?』
ジュウゴの目は真剣で。
コイツ、沙羅のことになると無駄に真剣だな。
『洋介…二股してんだよ』
『マジかよ?!』
『マジ』
はあ、と溜め息を零すジュウゴ。
『沙羅のことは俺に任せとけ。
うまくやるから』
ジュウゴはそう言って沙羅の部屋へ消えて行った。
『瑞季、行くぞ』
『どこへでしょう?』
『…沙羅の愛しの洋介のところだ』
『かしこまりました』
ベットの上に落ちていたジュウゴのケータイを目につく場所において俺はまた、家を出た。