偽装婚約~秘密の関係~
『瑞季』
『はい』
『あれで…良かったんだよな?』
『晴弥様がなさることは正しいことしかありません』
『そうか』
瑞季の応えに思わずふっと笑ってしまった。
ったくコイツは。
俺が何を言ってほしいのか分かってやがる。
場所は洋介の家から車の中へと変わっていた。
俺の想いが通じたのか、
はたまたただの気まぐれなのかはよく分からないが洋介は最終的に沙羅と別れることを承諾した。
…条件付きで。
その条件は至って簡単だ。
明日中に洋介から沙羅に別れを告げること。
理由は一切言わないこと。
今後一切沙羅と連絡を取らないこと。
もちろん、この条件を出した時洋介は反発してきた。
今後のことは俺の勝手だろ、と。
そこで俺は最後の切り札を出す。
『この写真…お前の大事なヤツのところに送るぞ?』
俺が出したのはさっきまでこの家にいた洋介の彼女と洋介が仲良くラブホ街を歩いている写真。
『だ、大事なヤツって誰のこと言ってんだよ?』
おお、動揺してやがる。
『西野みゆ…お前が小学生のころからずーっと片思いしてるヤツのところだ』
それは瑞季が持ってきた思ってもみない情報だった。
洋介には好きなヤツがいたのだ。
そいつを振り向かせたいがために好きでもないヤツと付き合ったりしていた。
洋介とは、そういうヤツだったのだ。