偽装婚約~秘密の関係~
涙とキス
次の日。
いつも通りに…いや、いつも通りではなかった。
だって俺は沙羅の顔を見ることができなかったんだ。
今日中に洋介は沙羅に別れを告げるだろう。
と、いうことは沙羅はきっと、傷つく。悲しむ。それに…泣くだろう。
その原因は洋介だが、
でも俺がそうなるように仕向けた。
責任を感じないワケにはいかなくて。
だから今日沙羅とまだ一言も口を聞いていない。
そして授業が終わり車に乗り込む。
するとドアが開いたかと思うと
「森本さーん!
今日、沙羅んち行くからジュウゴとうち、乗せてってな~」
『かしこまりました。芽依様』
え…?…芽依(メイ)?
『…んだよ…おめぇら』
思わず顔をしかめた。
だって芽依の後ろにはジュウゴもいたから。
『ま、そう言わずにつめろよ』
ジュウゴが俺の横に乗り込み、沙羅と芽依は後ろの座席に座った。
『おい、ジュウゴ。
お前はどんだけうちが好きなんだ。
昨日も来ただろーが。
んで芽依。
なんでお前まで着いてくる?』
芽依はジュウゴの許嫁だ。
ジュウゴより頻度は低いものの、結構うちに出入りする1人だ。
『晴弥。男なら細かいことはグチグチ気にするな』
「そうだ、そうだー!」
ったくコイツらは。
はあ…と思わず溜め息が出てしまった。