偽装婚約~秘密の関係~
「瑞季さーん!
いつ見てもカッコイイですね~!!」
芽依が瑞季の腕を掴んでニコニコしている。
『お久しぶりです、芽依様』
瑞季はいつものように業務用笑顔を見せる。
コイツはいつも業務用の笑顔しか見せない。
俺と瑞季の関係は長いが、コイツの本当の笑顔というものを1度たりとも見たことがない。
『瑞季。
コイツらは無視してソイツのしつけ、頼むぞ』
俺は瑞季にそう命じると自分の部屋へ入った。
やっぱり沙羅と同じ空間にはいられない。
アイツの悲しんだ顔を想像するだけで胸が痛い。
瑞季はきっと、俺の今の心情を察してくれているはずだ。
アイツは俺の心を読むエスパーだから。
そして、多分…意外だ、と思っているだろう。
瑞季の中の俺は冷静で冷酷で、人のことなんてどうだっていい、そう思っているヤツだろうから。
正直、自分でも戸惑っている。
こんなにも1人の人間に振り回されて、あたふたするなんて思ってもいなかった。
俺をそんなふうにするヤツはアズサ以外、存在しなはずだった。
ベットに寝転んで考える。
俺はどれだけ沙羅のショックを減らすことができるだろう。
ほんの少しでいい。
それでいいから沙羅の受けるだろう打撃減らしてやりたかった。
目を瞑って頭をフル回転させる。
そして気づく。
あ…俺、また沙羅に振り回されてる。