偽装婚約~秘密の関係~
『で、洋介のところ行って、どうしたんだよ?』
もういい、と半分自棄クソの俺は言う。
『洋介に頼んだ。
沙羅と別れてくれ、って。』
『マジかよ!
洋介、承諾したのか!?』
『いろいろ紆余曲折(ウヨキョクセツ)はあったけど最終的にはな。
多分、今日中には洋介から沙羅に別れの話があると思う』
『なんだよ、それ。
ならさっきのこと言う必要ないだろ!』
ジュウゴの言うさっきのこと、は、
今日中に洋介に別れろ、ってやつのことだろう。
『沙羅に別れを意識させたかったんだ。
そうすれば少しはアイツのショックも減らせるんじゃないか、と思って』
『…そういうことか。
ならもう、俺は怒れない』
ジュウゴは苦笑いを見せる。
『お前が何も考えずにそう言ったなら怒鳴ろうと思ったけど。
でもちゃんと、お前は考えてた。…沙羅のキモチを。
だからもう、俺は何も言えない』
『バカか、お前は。
俺が何も考えないはずねーだろうが』
『ああ、そうだな。
なんせ世界の遊馬の次期社長だもんな』
その言葉にトゲがあった気がしたが、俺は何も言い返さなかった。
その代わり、うんともすんとも言わない沙羅の部屋のドアをじっと見つめていた。