偽装婚約~秘密の関係~
「はーるや、くん?」
沙羅の部屋から出てきた芽依が意味深な顔で俺を見ている。
『沙羅は?』
「泣いてるよ、ずーっと。
相当、怒ってるし、ショックも受けてるみたい」
これは作戦通り、と言えばいいんだろうか。
「でさ、聞いたんだけど…全部」
『全部?』
「そう、全部。
沙羅と晴弥の関係から沙羅の家の借金のことまで、全部」
『…そうか』
まあ芽依ならなんの問題もないだろう。
だいたい、沙羅が話すことはなんとなく予想できてた。
「これで、やっと謎が解けたんだよね」
『謎?』
「そう。ついこの間までアズサのこと引きずってたのに、ってさっきまで思ってたから」
『芽依っ!それ、禁句』
しーっと唇に人差し指を当てるジュウゴ。
そんなことしたって今さら遅いだろ。
もう俺の耳にしっかり入ってきてんだから。
『アズサはもう…関係ない。
アイツと俺はもう、終わったんだから』
芽依はチラッと俺の表情を確認すると
「そう」
とだけ返事をした。