偽装婚約~秘密の関係~
『アップルミント…か』
『左様で。』
カップを口元に近づけるとリンゴの甘い匂いとミント独特の香りが鼻を心地よく刺激する。
『瑞季』
『はい』
『沙羅の様子は?』
『泣いた後でしたので目が真っ赤でした。
あとはいつもよりやはり、元気がなかったかと…』
『そうか。
明日はいけそうか?』
『恐らくは大丈夫だと思います。
まあ沙羅様ですから、何が起ころうとなんの問題もないかと思われます』
『分かった』
カップをテーブルに置き、部屋に戻ろうとしたとき、沙羅の部屋のドアが大きな音をたてて開いた。
ついに来た、か。
部屋から出てきた沙羅の顔を見た瞬間、全てを悟る。
…洋介が沙羅に別れを告げた。