偽装婚約~秘密の関係~
勝負の時
『おはようございます、晴弥様。』
次の日の朝。
重たい瞼をなんとかこじ開けながらソファに座る。
『寝不足、ですか?』
『ああ、ちょっと考え事しててな』
考え事…なんてしてない。
ただ目を瞑ると沙羅とのキスを思い出して、
なぜかドキドキして、それで…寝られなかっただけだ。
『沙羅はどうした?』
『まだ寝ておられます』
『さっさと起こしてこい』
『かしこまりました』
なんなんだ。
ドキドキして寝られなかったのは俺だけ、ってことか。
チクショウ。かなりムカつく。
そんなこと思いながらコーヒーを一口。
うん、今日もうまい。
そして毎度のことながら瑞季は沙羅を起こすのに手こずっている。
仕方なく重い腰を上げ沙羅の部屋に入る。
そして耳元で囁く。
『沙羅?モーニングキスしてやろーか?』
「や、やめてっ!」
なんだ、起きられるんじゃないか。
だいたい今のリアクションは俺に失礼だな、おい。
『何そんなビックリしてんだよ。
昨日、あんな甘ーいキスしたのにさ』
そう言うと沙羅の顔が真っ赤になる。
あーあ。朝からそんなに照れちゃって。
ウブなんだな、沙羅。
「な、な、なんのことっ!?
あたし、そんな話、知らないなぁ~」
動揺しながら笑みを浮かべ、なぜか俺から離れようとする沙羅。
そんな簡単に俺から離れられるワケねーだろーが。
『なーに、逃げてんだよ?』
俺は沙羅の腕を掴み、
自分でも分かるくらいの悪い笑みを浮かべた。