偽装婚約~秘密の関係~
それから沙羅に部屋から追い出され、朝食の続き。
そして沙羅の用意ができたところで森本の車に乗り込んだ。
『沙羅。今日、早退するから』
「はっ?!なんで?」
なんで?ってコイツ、今日がどんな日か分かってないのか?
『言ってあるだろ、前から。
今日、親父と母さんが帰ってくる』
「………あっ!」
おい、マジかよ。
なんでこんな大事なこと、忘れてんだよ。
…あ、仕方ないか。
昨日まで洋介のことで頭、いっぱいだったんだもんな。
今日からは俺のことしか考えられないようにしてやる。
『沙羅。
あんまり緊張しなくてもいいぞ。
父さんは口下手だから無口でいると思うけど、
でも、母さんはよく喋る。
きっと、お喋りな沙羅と気が合うはずだ。』
「誰がお喋りよ!」
最後の言葉は聞こえないフリをして、
俺は窓の外を眺める。
変わらない風景。
親父も母さんも…変わってないんだろうな、きっと。