偽装婚約~秘密の関係~
それから読書に時間を費やし、適当な時間になったところで服を着替える。
いくら両親に会えども、身だしなみはきちんとしろ、それが母さんの教えだ。
ジャージで会おうものならきっと、ビンタをくらうに違いない。
そして沙羅の部屋に入る。
『瑞季。用意できたか?
そろそろ来る頃だろ?』
『準備万端です。
沙羅様、行きましょう。』
瑞季が声をかけると沙羅が振り向いた。
……化けた。
速くなりそうな鼓動を必死で抑え、そんなことを考える。
『………ああ、沙羅か。
誰かと思った』
俺は笑いながらそんなことを言う。
そして、頭の中ではつくづく女は怖い、と思う。
だって化粧と着る物でこんなにも変わってしまうのだから。
さっきまでは活発な女の子、って感じの沙羅が
今やキレイなお姉さん的雰囲気をまとっている。
あくまでも雰囲気で言葉を発すれば沙羅なんだろうけど。