偽装婚約~秘密の関係~
食事が始まると会話の中心はほぼ母さんで。
どうでもいい話をペラペラと披露する。
沙羅は最初こそぎこちなかったものの、だいぶリラックスしているのか今は笑いながら時折母さんの話に相槌を打っている。
うん、なかなか順調だ。
さすが瑞季に教えてもらっていただけある。
そして父さんは話を聞いているのか聞いていないのかそれも分からないほどに無表情で。
ただひたすら、口に食べ物を運んでいる。
食後のコーヒーが運ばれてきたとき。
突然、母さんが真剣な目をした。
「沙羅さん?
1つ、聞いてもよろしい?」
はい、と沙羅が言ったのを確認すると母さんは口を開く。
「ホントに、晴弥と結婚…するのかしら?
この子は、将来、世界の遊馬電器を継ぐ、男よ?
そんな男を支えるのはあなたの想像以上に大変だわ。
それでも、晴弥と結婚できる?」
カップを持とうとする手が止まった。
そしてゆっくりと顔をあげて沙羅を見る。
正直、心配だったんだ。
あんな質問を投げかけられて沙羅は不安そうな顔をしているんじゃないか、って。
でもそんな心配をよそに、沙羅は母さんに負けないくらい真剣な目でこう言った。
「はい。
私は、全力で晴弥さんをサポートします」