偽装婚約~秘密の関係~
沙羅の腕を掴んだままの状態で言う。
『沙羅?忘れたのか?
俺が、なんて言ったのか』
「わ、忘れたわよ!」
んな顔してさ。
忘れてない、ってことくらいバレバレだってーの。
『仕方ないなぁ。
もう1回だけ、言ってやるよ』
沙羅をからかうのが楽しくて。
動揺してる姿をもっと見たくて。
俺は沙羅の耳元に口を近づけ、囁く。
『いいこと…しような?』
顔を離すと沙羅がポーッとした顔で俺を見ていて。
『そんな熱い目で見んなよ』
「見てないっ!」
ハッと我に返った沙羅は首をブンブンと振る。
その姿はやっぱりおもしろくて。
思わず頬が緩んでしまう。
そして沙羅は何を思ったか突然、
「み、瑞季さーん!」
と、大声で叫んだ。