偽装婚約~秘密の関係~
『じゃ、もう1度俺とキスするか?
そしたら自分の本当の気持ち、分かると思うぞ?』
ニヤッと笑って見せ、少し態勢を変える。
顔を近づけると沙羅の目が閉じようとする。
なんだ。
すんなり受け入れるんだな。
と、思ったのもつかの間。
胸を押し返された。
『沙羅、諦めろよ』
「ヤだ!
もう絶対、あんたにキスされないの!」
それは無理だと思うけどな。
少なくとも、俺と契約中の間、2度とキスしない、っていうのはおそらく…不可能だろう。
『沙羅?
俺、昨日言ったろ?
沙羅は俺のペットだ、って』
「だからあたしはペットじゃないってば!
いい加減にしてよ!
あたし、お腹すいたんだけど!」
『はぁ…
ったく、色気より食い気だな、沙羅は』
まったく、沙羅はオンナ捨ててんのか?
色気ないくせに、食い気ばっかりはある。
そして、俺から解放された沙羅はドアへ一直線。
…のはずだったが、俺は沙羅の腕を掴む。
「ちょっ……っ…!」
沙羅の態勢が崩れる。
そして俺は、涼しい顔をして沙羅の唇を奪った。
ほらな。
俺の思った通りだ。
俺とキスしない、なんて無理なんだよ、沙羅。